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ALL DAY MUSIC #14

このMIXの一曲目にかかるタラフ・ドゥ・ハイドゥークス(Taraf de Haidouks)の笛奏者のゲオルゲに縦笛を売ってもらったことがある(それではミックスの再生ボタンをポチ!)。タラフが「Band of Gypsies 2」を引っ提げて日本にツアーで来た時のことである。ロマ・ミュージックにどんどんはまっていったきっかけがタラフだったので、この日のライブは本当に忘れられない。ロマ・ミュージックを簡単に説明すると、ロマ民族の音楽、つまりはジプシーと呼ばれてきた人たちの音楽だ。ロマというのは(諸説あるが)一般的にはインド北部の民族で、その人たちがヨーロッパに向かって移動し、そうすることでその土地の人や音楽とロマの人たちの音楽が融合されて豊かな音楽を形作っている。そのことは映画監督のトニー・ガトリフが撮った「ラッチョ・ドローム」という映画に詳しく描かれている。

「Band of Gypsies 2」はルーマニアのロマであるバイオリンなどの弦楽器中心のタラフと、マケドニアのロマでブラスバンドであるコチャニ・オーケスター(Kocani Orkestar)との合作で、その2つのバンドが日本にやってきたのだ。コンサートホールの大きなステージに所狭しと総勢20名程のおっちゃんたち。そのおっちゃんたちがひとたび楽器を鳴らし始めると、それはもう心が揺さぶられないはずがないような音楽を奏で始めるのだ。迫力も繊細さもこの大人数で綺麗に表現していく。どの奏者もめちゃくちゃうまくて、どんだけの時間を楽器と共にしてるんだと思った。そしてその中でもすごくかっこよかったのがゲオルゲだった。コチャニの迫力あるブラスの横で、ちっちゃな縦笛を吹いている。でもその存在感たるやもう僕は衝撃を受けた。もうそれが見れただけでも大満足のライブだった。コンサートホールという事もあり、椅子に座っておとなしく聞いていたが、どれだけ踊りだしたかったか。

そんな時間もあっという間、ライブが終わり、興奮も冷めぬまま名残惜しくホールから出る。するとエントランスの方から何やらお祭り騒ぎが聞こえてきた。もしや!と思いエントランスを見に行くと、先ほどまでステージにいたコチャニがエントランスでブラスを奏で、帰ろうとしていた観客たちともみくちゃで音楽をやっていた。そこで奏者はチップをねだり、踊っているものはチップを渡す。そこにいるみんなめちゃくちゃ笑顔。こういった光景が思い描いていたこの人たちのライブだと思い、僕もその熱狂の渦に入っていった。そしてその中にゲオルゲもいた。「5000円」と書かれたA4の紙と木製の縦笛を掲げながらウロチョロしていたのだ。それを見つけた瞬間に遠くにいた僕は手をあげてぐいぐいと近づいて行った。「それを買うのは俺だ」と(それでは音楽をお楽しみ下さい)。(店主)

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