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日々骨董市へ。通うまで。⑩

 骨董と聞くと、なんとも古臭い感じがするし、じいさんの道楽で「なんでも鑑定団」のあの世界が思い出されると思う。借金の肩で譲り受けた、売れば500万円にはなると言われた萩焼の壺。鑑定結果はなんと1000円!中島先生も「大事になさってください。」と例のトーンで優しく締めくくる。日曜日ボーっとついつい見ちゃうあれ。掛け軸だけは手を出しちゃだめだな~なんつって思いながら。ただ、骨董市といっても、色々な物が取引されていることがだんだんと分かってきた。最初は本当によく分からなかったので、ひたすら細かく観察する事から始めた。そうやって目を凝らして見ているうちに、自分が好きなものがはっきりしてくるのが分かった。いわゆる名物と言われ、価値がきちんと定まっているような焼き物だったり、有名な作家のものには今のところ、そんなに興味はない。まぁ、とんでもない値段で取引されていたりもするし、見るだけで十分だったりする。そういったものよりも、もっと素朴で偉そうじゃなくて、ダンボールの隅でちょっと申し訳なさそうにしているものに目がいった。お店の人にとってはどーでもいいけど、ぼくにとっては価値のあるものを探すのが楽しくなっていった。

 骨董市や古美術の世界を好きで見ていれば、自ずと知識も増えるし、知らないことは調べてだんだんと詳しくなっていく。ただ、その知識というもの実は厄介だったりもするとも思っている。物のスペックやブランド力に頼って買い物ばかりをしていると、なんだかとてもつまらないのではないかと思うようになった。もちろん、そういった説得力も古いものの魅力だけど。でも、もっと自由に注意深く観察し、気に入ったものを財布と相談して、お店の人とウマく交渉して買うのが骨董市の本当の楽しみ方だと思う。鑑定結果が1000円でもいいじゃない!気に入ってるんだったら!そしてそうやって集めたものは自分の生き写しで、兄弟みたいなもんで、己が現れているんだと思う。そこを俯瞰して見てみると、また面白かったりもする。そんな事を骨董市に通うようになり、色々見ていく中で思うようになった。そして自分の目で好きなようにエディットしてサンプリングしてアウトプットしながら道をつくった、民藝運動の父、柳宗悦や目白の「古道具さかた」の坂田さんや、南青山の「古民藝もりた」のご夫婦、襤褸(ボロ)をいち早く蒐集した文化人類学者の田中忠三郎先生からも日々学んでいる。ぼくにとってはとてもHIP HOPな人たちなのだ。とりあえず気になる人は家の近くで行われている骨董市にGO。無くても困らないけど、あったら少し日々の生活の気分が上がるものを探しに。

 最後の写真は、「農民美術運動」という洋画家、山本鼎が主導となり大正8年に始まった動きがあって、要は農民による芸術、クラフトを作る運動で、全国に広がっていったとされていて。この写真はその運動の中でも代表的な「木っ端人形」といい、農民が大きなカブを運んでいるさまを描写している。昔話の中から飛び出してきたような感じがとにかく最高。とても好きなジャンルです。民藝運動然り、作家性のない、地元に根付いて生活のために作られ、使われていた用の美だったり、こんな素朴な人形にこそ心が踊り、そして癒されます。ぼくも庶民。侍というよりは、農民です。奢ることなく、自分の目線を大切に、日々精進をしていくしかないと、こんな人形を見ながら思ったりします。

 という事で全10回、なんとか書けました。最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。今回掲載した10アイテム以外にも頑張ってこつこつとセレクトしたアイテムを2/10よりこのサイトで販売しますので、気になる方は「よくチェックしとけ、とか言っとく(©デブラージ)。」

VINTAGE OBJECTS
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